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TETSUYA OOI Architect and Associates
鶴川の家
内部の大きな、もう一つの外部
起伏や緑が豊かな郊外の鶴川で、敷地からは遠方の山や緑地を身近に感じられる。夫婦と子、両親の三世帯のプライバシーを確保しながら、どこからでも自然が感じられ,積極的に外部と関わることができる家が求められた。
まず外部と接する機会をたくさん確保するために、建物の外壁を敷地いっぱいに配置し周長を長くした。その中に、もう一つの外部を囲い込むように住空間を配置し、どちらからでも外部が感じられるようにし、光に満ちた風通しのよい家を目指した。また中央に設けた井戸は、内側から建物全体に通風もたらし、水音で場を和ませる。
2階のひとつながりの共用スペースは、外周部をガラス張りとし、コンクリートの廊下をめぐらせている。また、部屋の機能に合わせて床を下げ、コンクリートの廊下がキッチンカウンターやベンチ、バルコニーに変わる。窓廻りのグラデーショナルなレースは、光や風をやわらかく包み、近隣との直接的な視線をかわしている。
このもう一つの外部の存在により、自然と住まい手の意識を外へと向かせ、天候や環境の移ろい、あるいは周囲の気配などが建築のなかに入り込み、住まい手の居場所に強弱を生じさせている。
データシート
敷地面積:234.52 m2
建築面積: 80.72 m2
延床面積:143.13 m2
階数構造:2階建/木造(一部RC造)
統括・意匠設計:大井鉄也 大井鉄也建築設計事務所
構造設計 :加藤征寛 株式会社 MID研究所
設備設計 :山下直久、大澤武史 Comodo設備計画
小宅武尊 設備設計 桜組
ランドスケープ:石井秀幸 株式会社 スタジオテラ
キッチン :鈴木龍三 スタディオン株式会社
建築施工 :株式会社 山昇
造園施工 :箱根植木 株式会社
「いつもの原風景を持続させる創造的改修」
私が幼い頃から食べてきた、つるやパンの味わい深いパン。
滋賀湖北の木之本、北国街道沿いに、1951年創業から、地元に愛し続けられるパン屋を目指してきた、「サラダパン」で有名な「つるやパン本店」のリニューアルである。「サラダパン」をはじめ、その他にも「サンドウィッチパン」、「カステラサンド」等々、昔から、たくさんの人々に、ずっと愛され続けてきた。
一時期は、「大手製パンの製品開発や地方での事業展開」、「ショッピングスーパーの地元商店街の誘致」、「消費者の買い物移動のコンパクト化」等、時代の大きな流れにも影響を受けてきたが、そういった時を経て、いよいよ「つるやパン」は、オリジナルパンのみを展開し、また新商品を開発していくことになった。
本プロジェクトは、クリエイティブディレクターとして、私の双子である ANDAND 代表 大井福也 を主として、「つるやらしさの追求とブランディング」、「新商品の開発」、「既存店舗の改善点の洗い出し」から始まった。
※つるやパンとANDANDの協同で生まれた「まるい食パンラスク」は、日本パッケージデザイン大賞 2007 にて部門賞を受賞。現在では、渋谷ヒカリエのD&DEPARTMENTで、「サラダパン」等と一緒に販売されている。
そして、「今までつるやパンを愛して下さった地元の人々に、これからもずっと親しんでもらえるお店」がテーマとなり、「どこが変わったのか、新しさを感じさせないリニューアル」・「今までと変わらず地域のパン職人と地域住民とのコミュニケーションが誘発される仕掛け」が求められた。それは、「いつもの原風景を持続させる創造的改修」であり、コンビニエンス化されてしまった既存の店内をひとつひとつ選別し、剥がしたり加工していくデリケートな作業から始まり、お店も創業時の状態に回帰していくような改修だった。
具体的には、既存のビニル床シートをモルタル金コテ押さえの土間に設え、壁は焼杉板に塗装拭き取り仕上げ、既存の天井は剥がして木造架構のあらわし、既存の厨房はそのまま残し、照明は既存のLED照明を電球のみ取出しワイヤーとフックで固定した。
また、新しい要素としては、大手製パンの既製の陳列棚ではない、2つのつるやパンの商品陳列に合った家具を製作した。湖北の山から選定・切り出し・製材・乾燥まで施した杉を使い、木之本の大工がつくった「丸い食パンテーブル」と「四角い食パンカウンター」である。
今回の改修により、つるやパンは本来あるべき姿を取り戻し、これからもずっと、地域住民やお客様にとって愛着がもてるパン屋さんとなると信じている。